挑戦を諦めたくないあなたへ
大阪市内の落ち着いた街で一人暮らしをしながら、8年間にわたり採用支援の現場に立ち続けてきた梶田さん。柔らかな語り口の奥にあるのは、驚くほど現実的で、そして自由を求める強い意思でした。
「別に採用にこだわりがあるわけではないんですよ。ただ、できるからやっているだけで」
そう笑いながらも、将来像を尋ねると、言葉の温度が少しだけ上がります。
「仲のいい人に“これやろうぜ”って言われたときに、“お金がないから無理”とか“スキルが足りないから無理”って言いたくないんですよね。予定があるから断るならいい。でも、自分の力不足で面白そうなことを諦めるのは嫌なんです」
目指しているのは、肩書きでもポジションでもありません。「動ける人」であること。そのためのスキルと資金を備えていたいという、極めてシンプルで本質的な願いでした。
挑戦したい人と「準備」の意味
梶田さんの話を聞いていると、「本質」という言葉が何度も浮かび上がります。
ブランディングがもてはやされる時代に対しても、少し距離を置いた視点を持っています。
「付加価値って言ってるだけのものもありますよね。付加されているそれが本当に価値かっていうと、違うことも多い。」
強い言葉の裏には、本質を見抜こうとする誠実さがあります。何を買うにしても、何を選ぶにしても、「本質的な価値はどこにあるのか」を考える。その姿勢は、仕事にも色濃く表れています。
採用支援では、企業の要望をそのまま言語化するのではなく、ペルソナを具体的な“存在する一人の人間”として描き出します。
「スーパーマン募集しても人は来ないんですよ。だから、どういう人なのかをちゃんと設定して、その人の気持ちになって記事を書く。ビジュアルも考える」
写真撮影、デザイン、文章作成まで一気通貫で手がけるのも、「ラグも齟齬もなくしたい」という想いからです。伝言ゲームを排し、自ら責任を持つ。そこには、動ける人であるための地道な実践がありました。
テニスを20年以上続け、最近はダーツにも打ち込む梶田さん。「肘固定系ですね」と笑いますが、フォームを磨き、感覚を掴もうとする姿勢は、仕事と同じです。派手さはなくても、着実に伸ばしていく。その積み重ねが、いざというときの選択肢を増やします。
転換点は「自由の定義」だった——動けることこそ最大の資産
梶田さんの言葉を通して見えてくるのは、「自由」の再定義です。
多くの人が、自由を“時間があること”や“縛られないこと”と捉えます。しかし梶田さんにとっての自由は、「やりたいと思ったことを、能力や資金の不足で諦めなくていい状態」です。
これは、決して派手な夢ではないかもしれない。けれども、極めて実践的かつ現実的で、強い。
採用支援という仕事も、実はこの思想と深くつながっています。企業が欲しい人材と、求職者が求める環境。その両者の本音を探り、最適な接点をつくる。そこに必要なのは、流行の言葉でも、過剰な演出でもなく、「誰にとっての価値か」を突き詰める力です。
AIの進化にも強い関心を寄せています。
「このまま発展したら、仕事のツールはだいぶ変わるでしょうね。自分の仕事も変わると思う」
未知の変化を恐れるのではなく、「面白そう」と感じたら調べる。情報に触れ、掘り下げる。その姿勢は、環境が変わっても動ける人であるための準備でもあります。
自由とは、準備の総量なのかもしれません。日々の積み重ねが、未来の選択肢を増やしていく。その構造を、梶田さんはすでに体現しています。
個人の準備が、時代を動かす
最後に、最近欲しいものを尋ねると、意外な答えが返ってきました。
「ドラえもんズの“親友テレカ”ですね。必殺技みたいなカードなんですけど、この前たまたま思い出して。売ってるのかなと思ったら、まあまあ高くて」
少年のような笑顔で語るその姿に、梶田さんの本質が垣間見えました。合理的でリアリストでありながら、遊び心を忘れない。面白そうと思ったものには、素直に心が動く。
動ける人であること。それは、単に能力や資金を備えることだけではありません。好奇心を持ち続けること、違和感を見逃さないこと、本質を問い続けること。そのすべてが、次の挑戦への土台になります。
「お金がないからやめとく」は、今日から少しずつ減らせるかもしれません。スキルも、情報も、積み上げることができます。
梶田さんの歩みは、特別な英雄譚ではありません。けれど、「動ける自分でありたい」と願うすべてのビジネスパーソンにとって、静かな勇気を与えてくれます。
次に誰かから「これ、やってみやん?」と声をかけられたとき、あなたはどう答えたいですか。