自分らしく生きられる居場所を自分たちで作る
それぞれが自分らしく生きる、個性輝く社会を創り出すために
「自分を生きてるって思えるようになりました」。 大阪ガスで再生可能エネルギーの普及に携わる谷怜奈さんは、そう穏やかに微笑む。 彼女が今、心からそう感じられるのは、社内コミュニティ「Talking About Youth(TAY)」を通じて、 “自分の想いを安心して話せる仲間”と出会えたからだ。 TAYは、35歳以下の社員たちが社内外のゲストを招き、 対話を通じて気づきを共有したり、“やってみたい”を実際に“やってみる”サードプレイス。 これまで映画を語ったり、囲碁を楽しんだり、筋トレで汗を流したり—— そこでは肩書きや立場を超えて、「人として」つながる時間が流れている。 激務に追われ、やりたいことを見失っていた時期を経て、 今の彼女の笑顔には「働くことの意味」を自分の言葉で取り戻した確信がある。
守りたいのは“日本”。“日本”とはつまり、周りにいる身近な人たちの“笑顔”。
谷さんの幼少期の興味は少し不思議な家庭環境で築かれた。 台湾の生体師が定期的に来訪し、目の前でがんや一般的な医療では治しえない病を治す光景を見た。 その経験から人の身体の不思議を感じ、また同時に科学的な医療ではない根源的に病を治癒できる“人の手”の力に魅了され、東洋医学に興味を抱いた。 その興味から大学・大学院では基礎医学・生物学を学んだものの、日本の医療業界は西洋医学を基準に設計されており、東洋医学を一生の職としては選べないと感じた谷さんは、医療とは異なる道を就職先に選んだ。就職活動では、“人が好きならどんなことも興味を持って努力できる”という自己分析の結果、「人の面白さ・温かさ」を理由に大阪ガスを選んだ。
入社後は、仕事にやりがいはあったものの、キャリアを考えた際にこのままでいいのか?と疑問を抱き始める。 「何のために働いているのか」——その問いに答えを見出したいと、土日に様々な起業家セミナー、副業セミナー、資産形成セミナーに通い、自身への問いの答えを探し求める。 やがて辿り着いた答えは、「お金や形だけではなく、自分自身の身近な人の笑顔を守り続けたい」という想いだった。 きっかけは元政治家が行っていた『日本の歴史と教育』というセミナー。そのセミナーでは日本の教育では教えていない様々な歴史があること、メディアで報道されない世界の様々な事実があること等、歴史と情報リテラシーに関する話を知った。『このままでは日本が日本ではなくなるかもしれない――』当時の谷さんにはそれが正しいのか正しくないのか判断もつかなかったが、『身近な人の笑顔を守り続ける』ためには、もちろん日本があることは重要であり、それが危機的状況にあることを“知らない”こと自体に危機感を覚えた谷さんはそのまま政治の勉強を始めた。
政治について学べば学ぶほど、いかに今の日本がおかしな状況にあるかを実感してくる。一時期は『こんなところで働いている場合じゃない!日本を守るために自分が政治家にならないと!』とまで思ったものの、無知な若造が思いだけで政治家に立候補するのは身の程知らずなだけで本当に政治を任せる気になれない、と自身で感じたため、まずはビジネスマンとして、ビジネスの世界で社会に働きかけられることを探そうと、社内ビジネスコンテストに挑戦することを選んだ。身近な後輩の『孤独』に寄り添えるサービスを提案し、ビジネスコンテストでは審査員賞を受賞した。入賞後、約1年半新規事業の検討を続けたものの、上司の一言が彼女の進路を変えた。 ——「谷さんがやりたいのは、ビジネスじゃなくて社会貢献でしょ」。 その瞬間、彼女は気づいた。自分が本当に作りたいのは「ビジネス」ではなく、ひとりひとりが安心して笑い、生き生きと生きる時間そのものだったのだ。
谷怜奈さんが灯す、“自分らしく生きる”という希望
新規事業から一転、若手のサードプレイスとしてTAYの運営事務局の活動を始めた谷さんは、TAYの活動を通じて 「一人ひとりが自分らしく生きられる居場所」を社内に広げてきた。 「私は恵まれた環境で育ったけど、幸せだったのは“選べた”からだと思うんです」。 進学も就職も、自由に選択できる環境こそが豊かさの根源だと感じたと話す谷さん。 だからこそ、働く女性たちが「子育て」や「キャリア」に制限されず、 “選択できる生き方”を体現したいと考えている。 「私がその両立を体現して、後輩たちに背中を見せたい」。 谷さんの挑戦は、誰かに代わって社会を変えることではなく、 自分自身の生き方を通して、 “社会のあり方そのものを再定義していく”ことにある。
一人ひとりが社会の“エネルギー”になる未来へ
近ごろの谷さんのテーマは「まず自分の幸せを築くこと」。 理想のパートナー像を問うと、「多様な価値観を受け入れてくれる器の大きな人」と笑う。 けれどその言葉の裏には、自分を整え、他者と響き合う覚悟がある。 「結局、愛国心って隣の人に優しくできる心の在り方そのものだと思うんです」。 そう話す谷さんの眼差しは、社会の“エネルギー”の循環を見つめている。 子ども、高齢者、声を上げられない人たち—— その誰もが、自分らしく生きられる優しい社会をつくりたい。彼女が築こうとしているのは、 働く女性の未来だけでなく、「人が豊かにに生きる世界」そのものだ。 その笑顔はきっと、次の誰かの背中を押す。 小さな対話から始まる、静かで確かなエネルギーの連鎖が、今も広がっている。