山口マキさんが描き出す「心の軸を育てる力」
揺らぎながらも前に進もうとする人の強さへ
放射線技師として、黙々と与えられた役割を果たす日々。その裏で、山口マキさんは誰にも言えないほどの生きづらさと、気づけば心をすり減らしてしまうほどの孤独を抱えていました。 「自分は裏方でいい。人と関わるなんて無理。」——そう信じて選んだ医療の道は、やがてうつという形で彼女の身体と心に限界を知らせます。
しかしその暗闇の中で出会ったのが、“心の仕組み”でした。「心がこんなに仕事や体に影響を与えていたんだ」と気づいた瞬間、彼女の世界は少しだけ動き始めます。初めて触れた心理の学びは、マキさんの中に眠っていた感情、力、願いにそっと光を当てました。 それが、長く続いた生きづらさに変化が芽生えた最初の予兆でした。
自分の軸を求める人が出会う「心の軸」
うつを抱えたまま仕事を続ける毎日。「消えたい」と思いながら、ほんの少しの希望を探すように生きていた頃、友人から勧められたのが心理カウンセリングの学びでした。 最初は自分のためだけに始めた学び。しかし、そこで見たのは“悩みながらも必死に生きる他者の姿”。「こんなに頑張って生きている人がいるんだ」と知ったことで、マキさんの心に小さな灯がともります。
カウンセリングを学びながら、周囲の景色が変わり始めました。「明るくなったね」「積極的になったね」と声をかけられ、仕事でも驚かれるほど成果を上げ、コンテストで1位になる経験まで重なりました。 “私ってこんな力があったんだ”と知った瞬間、長く閉じていた心の扉が音を立てて開いていきます。
そんな彼女に先生がかけた言葉が、新たな挑戦の一歩を決定づけました。 「私たちに恩返しするんじゃなくて、次は悩んでいる人に思いを渡してあげて。」 その言葉が、マキさんが「誰かの背中をそっと押す人になりたい」と決意する転機となりました。
心理セラピストとして見つけた「変化の本質」
資格取得後、ボランティアから始まった心理カウンセラーとしての実践は、数多くの人生にふれる時間でもありました。特に心に残っているのは、過食嘔吐を乗り越えたある若い女性との出会い。
“誰かのために頑張らなきゃ”——自分を後回しにし続け、いつしか「自分」という主語を見失っていた彼女。しかしマキさんとのカウンセリングを重ねるうちに、静かに心の奥から言葉が湧きあがります。 「私、何がしたいんだろう?」 自分を取り戻すその問いは、彼女の中で眠っていた本当の願いを呼び覚まし、やがて彼女は自由を選び、新しい土地へ飛び立つ決断をします。 その変化は、マキさん自身にも深い学びをもたらしました。
マキさんは語ります。 「自立って、わがままに生きることじゃないんです。自分で選び、自分で舵をとって生きられること。それができれば、人生はどんどん広がる。」
心理セラピーとは、ただ心を癒すだけの仕事ではありません。 誰かの“生きる力”を再起動し、外側の世界に振り回されない“自分の軸”を取り戻すための伴走者。 かつて生きるのが苦しかったマキさんだからこそ、その言葉には揺るぎない実感と優しさが宿っています。
そして今、マキさんは“心と体のつながり”にも深く目を向けています。ピラティスに夢中になっている理由を聞くと、こう微笑みます。 「自律訓練法と同じで、体に丁寧に意識を向けると、心も整っていくんです。」 心だけでなく、体からも「自分を取り戻す」。その探求は、彼女のセラピーに新しい深みをもたらしています。
個の変化を社会につなぐウェルビーイングの未来へ
心理セラピストとして活動して10年。マキさんはいま、新しいステージに向かおうとしています。 企業や病院、学校など、より広い社会の中にメンタルケアを届けていきたい——その願いが、次の一歩を後押ししています。
「小さなことでもいいから、社会のどこかに役立てたら嬉しい。」 その言葉は控えめに聞こえますが、本質はとても力強いものです。
自身がかつて孤独の中でもがきながら見つけた“自分を生きる力”。 その力をより多くの人に手渡すために、マキさんの挑戦はこれからも続きます。
最後に、マキさんの経験から導かれるメッセージを贈ります。 「人生の舵は、誰よりも自分が握っていいんです。小さな感情を大切にするところから、自分を生きる一歩は始まります。」
迷いながらでも、自分の足で未来へ進むこと。 その大切さを、マキさんの物語は優しく教えてくれています。






